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zoom RSS きょうのオリジナル曲:心童 (イージーリスニング)

<<   作成日時 : 2015/03/06 16:05   >>

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多摩川河川敷では、映画の撮影を何度か見物した。
ある日は柳葉敏郎、またある日は沢口靖子…。

俳優たちのオーラにあえなく酔ったものだ。

だが、このたびの出来事は映画ロケではなく、ましてや、ひとを元気づけるオーラなどどこにもなく…。

画像
心 童






 折にふれ、多摩川に遊んだ。
 丸子橋あたりがとくになじみ深い。
 川べりの散策、貸しボート、釣り、写真撮影などで親しんだ。
 わたしにとっての多摩川の歴史は、水の汚れなどがまだ話題にならなかったころから始まり、やがて、堰に吹きだまる洗剤の泡の長い歳月(多摩川を敬遠した歳月)を経、そして浄化が試みられ、いくらかは元の水にもどっていくまでのしばらくの歳月。

 丸子橋の上流、橋上駅二子玉川駅あたりではヤマベ(オイカワ)釣りを堪能。
 投げ釣りのコイの引きに欣喜雀躍。
 そして悪玉ブラックバスの登場。そのせいともされるヤマベの魚影減衰。
 水質悪化。それが改善されたといっても、いま、かつてのようにたくさんのヤマベ釣れることがあるのだろうか。
 ここでは、水量が少ないとき、ところどころ川底がむき出しになって、幅は広いけれど浅そうに見えることがあり、ある日、流れを横断できると甘い見込みがあったか、四輪駆動のクルマが流れの途中で往生し、レスキュー隊に親子連れらしい3人が救助されるのを見た。

 河川敷では、映画ロケにも何度か出くわした。
 柳葉敏郎が川べりでなにやら叫んでいた。
 足元を安定させるために、小さな板が敷かれていて、俳優はそれに乗っかって演技をしていた。あれは映画ではなくてテレビドラマだったと思うが、画面ではもちろん足元は別の映像にするなどして、柳葉敏郎は川べりの玉砂利の上にふんばって男くさく叫んだのだろう。
 べつのときには、沢口靖子が出番を待ってロケバスのかたわら、日傘の下に控えていた。メークの係のひとらしい女性がそばについていて、女優はこれでもかというほどのオーラを放っていた。
「おい、もっとしっかりセリフをいえよ!」
 叱られたのはだれだろう、撮影時の音声をモニターしている男が怒鳴っていた。

 毎年、きまっていくつか多摩川での溺死のニュースがある。夏場よりも、冬季のほうが多いくらいだ。泳いで溺れるのではなくて(泳ぐひとがいるとしても、少ないだろう)酒に酔って流れに落ちるというケースである。

 2月下旬の夜に、ここで泳ぐよう命じるものがいるとすれば、それは殺意に等しいといっていい。裸になるよう命じるだけでも過酷だ。
 そうした悪鬼のような男が現れた。18歳。


                 ★


 川崎と千葉を結ぶ東京湾アクアラインの道路工事が始まる次期、たまにバイクで浮島へ出かけた。ただ、工事のようすを眺めるだけだったが。川崎市川崎区浮島。

 わたしの直近の18年間は、弟の自殺などがあったけれども、それでもありふれた人生だといっていい。年間3万人ものひとが自殺する国に住んでいるのだから。
 そして知的には、衰退こそすれ成長はなく、歳相応に体力も気力も衰えた。

 川崎市川崎区の18歳は、生まれてから18年の間に、経緯を知る由もないが、殺人を犯すまでに反社会的な人物へと屈折していったわけだ。

 冬の夜の多摩川で、5歳下の中学1年生を泳がせる。
 もし、この13歳が心臓まひなどで亡くなっていれば、男の罪は、過失致死にとどまるなどの結果になったかもしれぬ。そして男はそれを期待し、最悪でも殺人を未必の故意とするたくらみでもあったか。
 
 隠岐の島生まれの13歳は、日ごろ、殺されるかもしれないと恐れつつも、その瞬間まで救いを求める心を持ち(それは命あるもののきわめて自然な願いだ)、ひたすら、時の流れに身を任すほかなかったのかもしれぬ。
 そして時はかれを救わなかった。
 河川敷で18歳男はカッターナイフを手に、少年を殺害したというのだ。
 そうしてだれもかれを救えなかった。

 幼い弟たちの面倒をよく見ていたという、新聞などで見る13歳のあどけない笑顔。
 知り合いの少女に「知り合いじゃないふりをしていろ」と、少女がいじめられるのを防ぐために、18歳男らの眼からそらせようとしたやさしさ。

 笑顔もやさしさも、抹殺された。

 いや、笑顔もやさしさも、人々の心に輝きつづけるだろう。
 目立たないけれど(報道だけでは見えにくいけれど)、かれを救おうとしていた友人たちがいたのであり、それ以外の多くの人の心にもわけへだてなく、かれの笑顔は大切にされるだろう。
 少年の死は痛ましい。
 しかし、実をむすばなかったとはいえ、少年を救おうとしていた友人たちが存在したことも忘れてはならないし、かれらの勇気を讃えたい。



 少年の冥福を祈る。


 合掌






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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
心童を聴きながら七里さんの記事を読ませてもらいました。
只々切なくて 何度も文字が霞んで読めなくなりました。
この曲が少年に届いていると信じます。   合掌
misa
2015/03/10 21:48

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